徒然記
百合とか漫画とか小説とか。雑多な話題を、つれづれなるままに。
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Dark Seed/鵺の砦
最近読んだ漫画について二言三言。

●Dark Seed
紺野キタさんの、おそらく初の長編ファンタジー。全3巻にて完結。
2巻を読んだ時には「これほんとに3巻で終わるのかな?」と思ったんですけど、最終回手前まで読んでも「これほんとにあと1回で終わるの!?」と。
悪玉の方が常に先んじていて、主人公側が後手後手に回る展開に「もしやバッドエンド…?」とハラハラすることに。
それでも、ラストで追い詰められた主人公セレストが闇の誘いを振り切る場面では、ベタだなあとは思いつつもちょっぴりうるうると来てしまいました。こういうシチュエーションにはやっぱり弱い私。

設定がかなり複雑な上に登場人物も非常に多くて、物語世界を理解するのに少々骨が折れました。もう少しキャラクターを絞り込めばわかりやすくなったかも…とも思うんですが、全体的に見れば面白かったなあと。
(ファンの贔屓目はあるかも。紺野さんの描く女の子を見るだけでも、かなり幸せ気分になれる私ですんで)

あとは、セレストとそのパートナーのクリスとの関係をもっと掘り下げてくれれば、百合好きとしては嬉しかったとこですが。いつもいがみ合ってる二人が実は信頼し合ってる…なんて部分が、いまひとつはっきりと描写されなかったのがちと残念。

Dark Seed 3 (3) (バーズコミックス ガールズコレクション)Dark Seed 3 (3) (バーズコミックス ガールズコレクション)
(2008/03/24)
紺野 キタ

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●鵺の砦
あとがきにて、作者の福島聡さんが「病んでます」を連発してるとおり、かなりダークでねじれたお話が収められた短編集。「みかんスープ」の結末なんか相当に酷いです。(救いが無さすぎて)

そんな中で「エマ」の森薫さんが作画を担当した合作「すみれの花」は、かなり異色の出来。
これは女子高生ふたりの友情もの…と言っていいんだろか。構成やら省略の仕方やらが特殊で、やや難解なんですが、二人の作者のミスマッチ感がなんとも不思議な雰囲気を醸し出してる一篇になってます。
考えてみたら、森さんの描く現代女子高生というのも希少かも。
学園祭の背景に、シャーリー風のメイドと宇宙パンダ(福島さんのオムニバス「少年少女」に出てくるキャラクター)がさりげなく居たのには笑いました。

鵺の砦 (BEAM COMIX)鵺の砦 (BEAM COMIX)
(2008/02/25)
福島 聡

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黒博物館スプリンガルド
『黒博物館スプリンガルド』(講談社モーニングKC/全1巻)を読みました。「うしおととら」「からくりサーカス」等、アツい少年漫画でお馴染み藤田和日郎さんの、青年誌掲載作第2弾です。
面白かったー!
個人的には、以前感想を書いた前作『邪眼は月輪に飛ぶ』より好きかも。

黒博物館スプリンガルド (モーニングKC) 黒博物館スプリンガルド (モーニングKC)
藤田 和日郎 (2007/09/21)
講談社

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19世紀のイギリスで実際にあったという「バネ足ジャック」事件を基に描かれた物語だそうですが、そこは藤田和日郎、ただの怪人ものでは終わりません。
怪人の正体、その秘めた想い。もう一人の怪人の歪んだ愛情。そして二人の怪人の激突…! と続く熱い展開は、もう藤田漫画の真骨頂という感じ。
豪雨の中、教会の扉を背にして、バネ足ジャックがもう一人の怪人に言い放つ台詞には痺れました!

キャラクターとしては、人物の表情の落差が魅力です。特に、物語の「聞き役」であるところの黒博物館の女性キュレーター(学芸員)さん。
登場時は冷徹そうに見えた彼女が、話が進むにつれ興奮していき、表情がコロコロ変わるようになるのがとても可愛いんですよ! あとがきマンガで、アシスタントや友人に好評だったと描かれているのも頷けます。

それにしても、冷静に見ればかなり滑稽なはずの「バネの足を持つ怪人」なんてものを、ここまでかっこよく切なく描けるのはすごいなぁと思います。心に闇を抱えたダークヒーローを描かせたら、藤田さんは現在の漫画家さんの中でもトップクラスなんではないかと。
(ちなみに私、「うしおととら」では、ヒョウ(漢字は金偏に票)と流(ながれ)が大好きなのです。主人公の潮(うしお)のまっすぐさもすごくいいんですけど、私のような駄目な大人には少しまぶしすぎて…)

併録されてる後日談的なお話「マザア・グウス」も楽しかったです。うん、やっぱりこういう元気で芯の強い子供たちの話も良いなぁ。
……やっぱりまぶしすぎるけど。(笑)
短編漫画の楽しみ
短編漫画が好きなんです。
いやまあ私もすっかり歳食っちゃて、近頃長い話を読むのが辛くてねえ…げほげほ……というのは半分以上ほんとだったりはするんですが、それを別にしても短編漫画っていいなと思うんです。

雑誌連載の長編作品が主流の漫画界においては、短編作品ってかなり不遇な位置にあるような気がするんですけども。
でも、本当に力のある作家さんが描く短編って、すごく贅沢だなあと思います。ちょいとお手軽なエッセンスを注ぎ足してシェイクすれば、いくらでも長編にできそうなアイデアやテーマが、少ないページにぎっしり濃密に詰まってる。
そんな濃厚なお話をわずか数分で読めるなんて、これを贅沢と言わずして何と言いましょうか。

ただ、ややもすると読むのに要する時間が短いだけに、一年もすると内容をすっかり忘れてるなんてこともあったり。でもそうして改めて読み返してみた時には、以前印象に残ったのとは別の作品に新たな感銘を受けたりすることも。
そういう楽しみ方もまた、やっぱり贅沢だなあと思うんです。

以下、特にお気に入りの「連作短編シリーズもの」を調子に乗って挙げ連ねてみました。
全部で10作。長いのでお暇な方、興味のある方だけどうぞ。


いたいけな瞳(吉野朔実/集英社ぶ〜けコミックスワイド版全8巻、小学館文庫全5巻)
吉野さんの読み切り短編シリーズ、全31篇。美しく閉じた世界と、小さな綻びから壊れていく世界。とにかくほぼハズレがないのがすごいです。
「月の桂」「死は確かなもの 生は不確かなもの」には背筋が凍り、「ローズ・フレークス」「薄紅」の言葉にできない感情に身をよじる。そんな、強く触れると壊れてしまう美しい毒入りのかけらのような物語。

回転銀河(海野つなみ/講談社コミックkiss全4巻)
ああもう、切ない。
それぞれの想いを放ちながら、交差していく星たち。甘酸っぱい青春群像、なんてありがちな表現では言い表しきれない、さまざまな形の「想い」が胸に来ます。続刊の予定はあるのかな…?

少年少女(福島聡/エンターブレイン全4巻)
とにかく一篇一篇が濃密。よくこんなに多岐に渡る題材で物語を描けるものだなあと感嘆します。「土に還る花」「自動車、天空に」「ドレミファソラシド レミ ソラミ」「憂鬱と薔薇」等々々…。
一読した時はそれほどでもなかったものも、あとあとずっと心に引っかかってくる感じ。

どうにかなる日々(志村貴子/太田書店F×コミックス全2巻)
この作品で志村さん独特の「間」に大いに嵌りました。日常の中で淡々と綴られる心の揺れが素晴らしい。
特に2巻は、百合な話もそうでないものも名作揃いだと思います。最終話のエピソードは何度読んでも泣きそうになる…。

茄子(黒田硫黄/講談社アフタヌーンKC全3巻)
黒田さんの漫画は本当に説明が難しいです…。しかしほんと「茄子」をとっかかりにこれだけ縦横無尽に描けるって、ちょっとありえないと思うんですけど。
出てくる人はたいてい、社会的にはかなりダメな人だったりするんですが、根底に流れる諦観にも似たユーモアが救いになってるような。

のら(入江紀子/竹書房バンブーコミックスより3巻まで・未完?)
名前のない放浪少女「のら」を狂言回しに、彼女に関わった人たちの姿を描く作品。ところどころの台詞やモノローグがずしんと来ます。
アスペクトから完全版が出てるって話ですが、見かけたことない…。この中では最も入手の難しい作品でしょう。傑作だと思うんだけどなあ…。

ひみつの階段(紺野キタ/ポプラ社POPLARコミックスAzone全2巻)
紺野さんの短編はみんな好きなんですが、やっぱり一番はこれかなあ。
この作品そのものが、ふさぎこんでいる誰かの頭をそっと撫でるやさしい手であり、疲れた時に飲むひとすくいのきれいな水、なんだと思います。

ブラック・ジャック(手塚治虫/秋田書店よりいろんな形態で刊行されてます)
言わずと知れた巨匠の代表作。これを連作短編と言っていいのか微妙ですが、大好きなんですBJ先生。
以前放映されてたTVアニメ版は、どうにも彼がただの「いい人」に見えて、途中で観るのをやめてしまいました。やっぱりBJ先生は、哀愁漂わせて去っていく後ろ姿が最高だと思うのですよ。

ラヴァーズ・キス(吉田秋生/小学館フラワーコミックス全2巻、小学館文庫全1巻)
これも短編とは言えないかも。同じ時に起こった同じ出来事を三者の視点から描いて、三篇すべてを読んで初めて全体の真相がわかるという構成の巧みさに唸らされました。(といってもミステリものとかじゃないんですけど)
同じ鎌倉を舞台にした最新シリーズ「海街diary」の続刊も楽しみ。

恋愛的瞬間(吉野朔実/集英社マーガレットコミックス全5巻、小学館文庫全3巻)
最後にもいっちょ吉野さん。いちおう森依先生とかハルタ君とかレギュラー陣はいますけど、そこを訪れる相談者こそがそれぞれの話の真の主人公。甘いイメージのタイトルに反してイタくてコワい「恋愛」がてんこ盛り。
情動を読み解く冷徹な視線と、情動を信じる静かだけれど熱い想いが同居する、稀有な作品だと思います。


書いてみて、つくづく私はこの手の形態の物語(オムニバス形式、というのかな)が好きなんだなあと感じました。最近読んだ中では「素晴らしい世界」(浅野いにお)とか「女の子の食卓」(志村志保子)とかもそうだったし。
そもそもサイトに置いてある小説もどきも、そういう感じのを目指して始めたんだっけ…。

ちなみにこの記事、「漫画ナツ100」という企画に感化されて、あとついでにお酒を飲んだ勢いに任せて書きました。(あんたはお盆に何してるんだというツッコミはなしの方向で)
できることなら企画にも参加したかったんですけども……漫画に関しては、思ったほどに量を読んでないのと、思った通りに好みが偏ってるのを痛感して5分で断念。なのでこんな形に。
でも私の3割から4割くらいは、漫画でできてると思います。
森とか城とか道とか
何しろぐったりよろろな状態が続いていて、ぐっすんとほほな気分です。言語中枢崩壊気味です。
もう7月。サイトの方もすっかり放置してしまってます。
芹奈の話、あんな所で放置って、我ながらほんとどうかと思うんですけども。(別に「レイニー止め」みたいなことをしたかったわけじゃなかとですよ…)

読んだ漫画メモ。

●いばら姫のおやつ(石田敦子/少年画報社KYコミックス)
石田敦子さんって、アニメーターとしてのイメージしか知らなかったんですけど、こういうお話を描かれる人だったのですね。
誰とでも寝る女、世界や未来への絶望、堕胎、居場所のない子供達……
可愛い絵柄に、重いテーマがぎっしりと。ですが結末はどれも希望のあるもので、後味の悪さはありません。
個人的には「東京ソーダ水」という短編がいちばん痛かったです。「大人になるのも結構楽しいよ?」って、ちゃんと言ってあげられる大人になりたかったなあ…。
邪眼は月輪に飛ぶ
藤田和日郎さんの「うしおととら」という漫画が大好きです。
手塚治虫作品などの古典的名作を除けば、最も好きな少年漫画と言っていいかもしれません。
その藤田さんが初めて青年誌で描かれた漫画『邪眼は月輪に飛ぶ』(じゃがんはがちりんにとぶ/全1巻/小学館ビッグコミックス)を、読みました。

邪眼は月輪に飛ぶ 邪眼は月輪に飛ぶ
藤田 和日郎 (2007/04/27)
小学館

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見ただけで生物を殺してしまう「邪眼」を持つ謎のフクロウ・ミネルヴァ。
かつて一度はそのフクロウを撃ち落とした老猟師・鵜平。
米軍の捕獲から逃れ、日本に舞い戻ったミネルヴァが東京を壊滅させたことから、米軍や鵜平の娘・輪(りん)を巻き込んだ両者の死闘が、今ふたたび始まる――てな感じのお話です。

青年誌掲載ということで、主人公は少年ではなく、齢70を越える老人。ですが熱い展開は、少年誌での藤田節そのまんまです。
途中出てくるチョイ役の軍人やスナイパー達のキャラクターには、「あまりにベタすぎるんじゃ…」なんて思った部分もあるんですが、そういうベタな「わかりやすさ」もこの人の持ち味のひとつですし、何よりクライマックスでの鬼気迫る絵の迫力が、それらを帳消しにしてくれます。

おどろおどろしい異形の存在や、ドロドロした情念や怨念。
そういったものを描きながら(そしておそらくは作者さん自身、そういったものにどうしようもなく惹かれながらも)、根っこのところでは、人間のまっすぐさを強く強く信じてる。
その熱い想いが直接伝わってくるような作風は、一見異端に見えて、その実はまさしく「少年漫画」の王道を行く漫画家さんなんじゃないかなと思います。
そんな藤田和日郎さん、今度は「モーニング」で連載開始とか。こちらも期待したいです。

それにしても、このミネルヴァというフクロウ。日野日出志さんの描く恐怖漫画の登場人物みたいなブキミ顔(目が異常にでかい)なんですけども。
にもかかわらず、なぜか時々妙に可愛く見えてしまうのは、いったい何故なんでしょうかね…?(笑)
蝉時雨のやむ頃
吉田秋生さんの最新刊ということで読んでみた「蝉時雨のやむ頃」。
決して「せみしぐれのむ頃に」ではありません。もちろんホラーでもありません。お間違えなきよう。(誰も間違えんて)

「海街diary1」というシリーズタイトルがついていまして、鎌倉を舞台にとある三姉妹(のちに四姉妹)を中心にした、ゆるやかでやさしい三篇の物語が収録されています。

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃海街diary 1 蝉時雨のやむ頃
(2007/04/26)
吉田 秋生

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帯には「吉田秋生が新境地に挑む」なんて書いてあるんですけども……もともと作者さんはこういうお話も描く人で、別に新境地というわけではないような。「BANANA FISH」以降のハードアクションの印象が強すぎるんでしょうかね。

鎌倉が舞台ということで「ラヴァーズ・キス」の世界とも繋がっていて、メインキャラの一人である朋章や、さらには美樹さんの弟なんかも登場。
といっても「ラヴァーズ・キス」の数年後のお話…ではなく、あの話よりちょっと前という設定のようです。なので併せて読むと、時代背景や流行・風俗が妙にズレてしまってる気がするんですが、そこはご愛嬌かと。
(「ラヴァーズ・キス」は12年前の作品ですしね…)

ともかくも相変わらず構成力は見事で、手堅く、安心して物語世界に没入していけるような作品でした。シリーズとしてはこの先、「ラヴァーズ・キス」のように様々な視点から語られる群像劇になっていくのかも。
個人的には、なぜか長女のさち姉(通称シャチ姉)に心惹かれてしまうんですけど。彼女が主役の話も読みたいなあ。

それにしても、私の好きな漫画家さんたちのほとんどがあまり新作を描かれなくなってしまった昨今、吉田秋生さんだけはずっとコンスタントに描き続けてくれているのは嬉しいところです。
サディスティック・19
「サディスティック・19」(立花晶/白泉社文庫)読みました。
この作品、ずっと読みたいな〜と思ってたんですけど、既刊の花とゆめコミックスは品切れらしく、なかなか入手できずにいたのです。
今回晴れて文庫版が出たということで、すぐさま購入。
しかし、コミックス全7巻分をよりぬきで文庫1冊に…というのはちょっと厳しかないですか白泉社さん?(笑)

内容は、一篇が2〜6ページくらいの不条理ギャグマンガです。
山道で迷った挙句きのこと結婚する女子高生とか、妖怪クラスの担任になった熱血新米教師とか、妻にラフレシアをプレゼントする為に2年間行方不明になる夫とか……
いや、もう……こういうノリ大好きです!
しかも出てくる女の子は皆可愛らしい!(ほとんどが変人ですけど;)

特に序盤の、シュールでブラックで投げっ放しなネタはかなりツボでした。
美少女双子姉妹のシリーズ(片割れのひそかな猟奇趣味?に、もう一人が戦慄する)はもう少し読みたかった!
後半の話では、一切納得のいく説明がされないまま力任せに話が進んでいく狭山シリーズが面白かったです。

それにしても、文庫が一冊だけってのは少し物足りない気が。
古本屋で、花とゆめコミックス版も探してみようかな…。

※余談ですが、こういう「少女漫画の可愛らしい絵柄のまま、えげつない(笑)ギャグをやる」という形は、誰が最初に始めたんでしょうかね? 
楠桂さん(シリアスホラーとギャグの両方を描く漫画家さん)あたりしか、私は思いつかないんですが、もっと前にも居たのかな…?
1リットルの涙
うつむいたまま
やむなく受け入れるのでなく
仰向いて 自分の意志で決めよう

顔をあげて
未来(まえ)を見て
自分で選ぼう


(第三章「決意」より)


「1リットルの涙」(原作・木藤亜也/漫画・KITA/幻冬舎バーズコミックススペシャル)読みました。
ひとつひとつの言葉が、仕種が、丁寧で想いに満ちた、紛れもなく紺野キタさんの作品でした。

難病に冒された少女の実話が原作ということですが、決してお涙頂戴な話にはなっていません。
その「悲劇性」を殊更に強調するのではなく。ここに描かれているのは、普通の少女が辛い現実を受け止めた上で、それでも未来へ進もうとする「意志」です。

「とても悲しい話」や「すごく可哀想な話」というだけでは、ほとんど涙腺を刺激されない私なんですが……こういう「深い悲しみや絶望に陥った人が、それでも必死に前へ進もうとする姿」にはじーんと来てしまいます。
この年の瀬に、読めて良かったと心から思える作品でした。

1リットルの涙 1リットルの涙
木藤 亜也 (2005/09/24)
幻冬舎

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さて、これから準備して、年またぎのお仕事に行って参ります。
それでは皆様、よいお年を。
ヤサシイワタシ#2
「ヤサシイワタシ」(ひぐちアサ/講談社アフタヌーンKC・全2巻)の第2巻を読みました。
1巻を読んだあと、続きを買うかどうか迷ってたんですが、古本屋で見つけたので買ってみることに。(1巻の感想は「7月の徒然」2005.7.27の所にあります)

……うわ、こんな話だったんだ……
以前の感想で書いた「痛い恋愛話」なんてもんじゃありません。そんな範疇には収まらないほどの、もっと重くて深い話でした。鬱なときに読むとかなり危険です。
冒頭の、弥恵と妹との会話に癒されたのも束の間、加速度的に不安定になっていく弥恵の姿が痛々しくて…そして物語半ばにして起きる出来事にちょっと呆然…
1巻でも充分痛かった台詞は、さらに研ぎ澄まされて、刃物のように鋭利になってます。

「きたなくて きもち悪くて 消えればいいのは うちの方だったのね」
「そういう人が 世界作ってる大多数かと思うと 絶望しそうになっちゃうの」
「耐えられなくなったら 手を離せばいいって 死んじゃえばいいやって」
「もう やめてもいいのか まだ 耐えられるのか――」

もろい足場の上を歩くような日々。生と死の間を揺れ動く振り子のような心。
それが死へと引き込まれそうになる姿が、容赦なく描かれています。

あんた死にたいんじゃなくて 願う姿で生きたかったんだろ
願いって
かなわなかったらダメなのか?


はっきりとした救いや、すがれるような何物かは、最後まで提示されません。
望むものを手にできなくても、望んだ自分になれなくても、それでも生きていく。ただその姿そのものが、淡い光のように描かれるだけです。

同じ作者さんが描かれている、今話題の「おおきく振りかぶって」は読んだことないんですが。
この暗い闇を抱えた上で光を描いているのだとしたら……それは確かに胸を打つ作品になるのかも、と思いました。

ヤサシイワタシ 1 (1) ヤサシイワタシ 1 (1)
ひぐち アサ (2001/06)
講談社

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ヤサシイワタシ 2 (2) ヤサシイワタシ 2 (2)
ひぐち アサ (2002/03/22)
講談社

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美貌の果実
突然むしょうに読みたくなって、川原泉さんの短編集『美貌の果実』(白泉社文庫)を買い直して来ました。
以前持っていたのは、姪に貸してあげたら戻って来ないままなので。(笑)

このマンガ、分類すればラブコメになるんでしょうか? いちおう。
だけど、ただのラブコメじゃありません。
王子様は白い牛に乗ってやって来るし、かつての少年と感動的な再会を果たしたヒロインは、とっても不細工なゴジラの着ぐるみを着たまんまです。
そんなすっとぼけた展開でありながら。
なぜ、こんなに泣けるんでしょう…?

川原泉さんの作品を知ったのは、ごく最近、文庫版が出た後です。それまでは、川原泉さんと竹本泉さんの区別もついてなかったくらいでした。(ごめんなさい)
…それがこんなに好きになるとは。

川原さんの描く、お気楽で呑気で、だけど正直で誠実な人たち。そういう彼・彼女らが、なんと言うか……すごくいとおしいのです。
ただもう愚かなくらいに正直で誠実な人たち。彼らのあまりに呑気な行動に笑っていたら、いつしか不意討ちのように涙のツボを押されてしまうのです。
それは特別でも何でもない言葉。例えば、こんな台詞。
「智彦さん、わたしは…
全力を尽くす限り どんな職業でも恥ずべきではないと
そう思います!」

(「大地の貴族」より)

小学生以上なら誰でも知っているような言葉。だけど、実際の社会ではほとんど力を持てないような言葉。
そんなありふれた言葉が、点目(目が点一個で描かれてる)のギャグ絵少女から放たれたとき……なぜか私の目は潤んでしまうのです。

この頃の川原泉さんの作品、ほんとに素晴らしいと思います。
できることなら、女の子同士の友情ものとかも読んでみたかったな〜。
※『笑う大天使』(白泉社文庫全2巻)は、ちょっとだけそんな感じもありましたが…

というわけで。
「架空の森」の苑生さんと「森には真理が落ちている」の雪村さんに惚れました!(そんなまとめ?)
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