わたしは、一つの物語である。誰もが一冊の本であるように。
しかし、その本が落丁だったら、誰に取り替えてもらえばいいのか。
交換不可能なら、道は二つだけ。
本を投げ捨てるか、読み進むか、だ。
ただ一冊の本は捨てられない。
となれば、つじつまが合わなかろうとページをめくるしかないではないか。
スキップ/北村薫
新潮文庫『スキップ』より
17歳から42歳へ。わずかなまどろみの間に、25年もの歳月を「スキップ」され、失ってしまった真理子。
初読の時は、面白いと思いつつも、真理子のあまりの前向きさ強さに今ひとつ感情移入しきれず、それほどにはのめり込めなかったんですけども。
(その点では、延々と繰り返される「同じ一日」に次第に気力を失っていく『ターン』の主人公・真希の方に、より共感できました)
あれから十年以上が過ぎ、真理子の精神の年齢よりも肉体の年齢に近くなった今だと。
読み返してみたら、どうなんだろう…? 泣くかも。
私の場合、落丁でも何でもなく、ストーリーが迷走して破綻してる小説ってな感じですが。
それでも、自分だけの本なら、ただ一冊だけの本ならば。
ページをめくり続けるしかないんです。
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人生はままならないことも多いわね
でも こういうこともあるのよ
若草物語 織江さんと日向子さん/志村貴子
太田出版『青い花』3巻より
物語をハッピーエンドに導く魔法の言葉。
それはファンタジーかもしれないけど、でも……という意味合いも含めて、やっぱり魔法だと思います。
このラストシーンに至る前の、
「……私今振られたのね」「そういうことになるわね」
という辺りの流れとか言い回しも、すごく好き。
てなわけで「アオイシロ」をプレイできないので、「青い花」を読み返してみました。こういうのも代償行為って言うんでしょうか。
……あのぶどうはすっぱいにちがいない!(ちょっと違うか)
退屈を不幸と間違えてしまわぬように
くだらないことで いつまでも笑えますように
ほどほどのことなら 誰でも許せますように
きれいな水/YO-KING
作詞:YO-KING
アルバム『デフロスタ ロック』所収
振り返ってみると今年は(今年も?)ずいぶんとよろりらな一年だったなぁと感慨に耽ってしまう、そんな年の暮れ。
このまま消えてしまいたいと思ったこともあり、何かに当り散らしたいと思ったこともあり。それでもとりあえずは、また新しい年を迎えられそうです。
もう一度、確認してみよう。
自分の願いを見失わないように。楽しいことにたくさん出会えるように。よく笑っていられるように。
心を凍らせてしまわないように。
DEFROSTER ROCK!
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月は嫌い 雪も花も
雪はやさしそうで冷たいだろう
月は高い所でオツにすましてサ
花は散ると見せて毎年同じに咲き続ける
みんなずるい
あたしが好きなのはね……たとえば
下駄とかろうそくとか包丁みたいな……
そんなもの
百日紅/杉浦日向子
ちくま文庫『百日紅(下)』より
雪や月や花。そういう美しいものにただ憧れ、夢想するよりも。
誰もありがたがらない、ありきたりな日用品が持つような。そんな強さがほしい。
今、この先へ進むために。天上の美よりも、地を這う力強さを――なんて。
上記の台詞に、そういった意味が込められているのかどうかは、とんとわからないんですけれど。
私自身は時々、そんなふうに思うことがあるのです。
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愛が
孤独を救うことはないのだ
恋だけが
一時 人の孤独を忘れさせる
ただ 恋だけが
一瞬
愛の無力を忘れさせる
カプートの別荘へおいで/吉野朔実
集英社ぶ〜けコミックスワイド版『ECCENTRICS』第4巻より
ずっと独りぼっちだった女性が、一瞬の夢を見て。
そしてまた、独りぼっちになって。
誰もいない野原で。たったひとり、踊る。
そんなラストシーンにかぶさる、このモノローグ。
私が初めてまともに読んだ吉野朔実さんの漫画が「ECCENTRICS」でした。
その「ECCENTRICS」ラストの衝撃も冷めやらぬまま(とはいえ未だあのラストをよく理解できてはいないんですけども)、ぼうっとした頭で読むことになったのが、この最終4巻に併録されていた短編「カプートの別荘へおいで」。
たしか読み始めた時には「このショックと混乱を和らげてくれるようなお話だったらいいな…」なんて思ってた気がするんですが。
……甘かった。
読み終わって、打ちのめされました。それはもう、しばらく立ち直れないほど。
なんて、とんでもない孤独を描いてしまう人なんだろう、と。
「誰もいない野原」というのは、吉野さんの他の作品にも幾度か登場します。
それは実際の風景だったり、あるいは心象風景だったり。…けれどたいていの場合、とてつもない孤独や空虚の象徴として。
そしてこの「カプートの別荘へおいで」の主人公である彼女、誰もいない野原でたったひとり踊る彼女の名前もまた、「のはら」というのです。
吉野さんの描かれるエッセイ漫画等を読む限りでは、多くの友人と楽しく有意義な日々を送ってるように思えるんですけども。
それでもその心のどこかには今でも、ぽっかりと「誰もいない野原」があるのかな……なんてことを、思います。
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君を知ったその日から
僕の地獄に音楽は絶えない
創聖のアクエリオン/AKINO
作詞:岩里祐穂
アニメ「創聖のアクエリオン」OPソング。
劇場版が公開されるとあってか、最近また有線などで耳にする機会が増えてきました。
例の「一万年と二千年前から〜」というサビはもちろんインパクト絶大なんですけども、後に続くこの部分もかなり好き。このワンフレーズだけでも、なんだかいろいろと想像力を喚起させられものがあります。
やっぱり「君」と「地獄」と「音楽」という組み合わせが、絶妙なのかな。
行きたい所はもうひとつもないの?
今のあなたが それがなりたかった自分?
もし本当にそうならそこで待つべきだよ
空手でもしながらね
人は会うべき人にしか会わない
だからいつでも
自分が一番行きたい場所に行くんだよ
そこに恋人はかならずやってくる
それは物理的な場所かもしれないし
仕事かもしれないし
趣味かもしれない
そう考えれば可能性は限りない
でも そこに行かない限り
会えない人がいるんだ
恋愛的瞬間/吉野朔実
集英社マーガレットコミックス『恋愛的瞬間』第3巻
第13話「世界の果てまで」より
まったくもって行動力のない私には、とても耳に痛いハルタ君の言葉。ああ痛い。
そして、重々わかっているのにいつまで経っても動けない自分のだめっぷりに、ちょっとへこむのです。ふう…。
素直に、ありのままに生きられたらどんなにいいだろうな、なんて思いつつも。
そんな自分のややこしいひねくれっぷりを、いまだ完全には嫌いになれないという厄介さ。
実のところ「百合話が好き」というのも、かなり屈折した理由からなんだろうなあと思います。私の場合。
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この国は どこへいこうとしているのか
ここに生まれ 死んでいった人達を尊敬したいだけなんだ
君が好きさ ゆっくり変えていこうぜ
この豊かさを味わおう
感謝して受け取ろう
バトンが泣いている/YO−KING
作詞:YO−KING
アルバム『音楽とユーモアの旅』所収
納得のできないこと。「だってそれは、おかしいでしょ?」と思うこと。
たくさんあります。
そして、それが当たり前のようにまかり通ってしまう環境も。
大層なことを言うつもりもありませんし、言えるような人間でもありません(基本的に駄目人間ですし)けれど。
自分を楽しませてくれるもの、癒してくれるものには、感謝の気持ちを持ちたいし。
素晴らしいものには、尊敬の念を持ちたい。
ただ、それだけなんです。
……それにしても、今年の夏は暑いです。ぐったり。







